漆芸家-古込和孝

自分の思う通りになっていくから

椀木地で若い人を探していたところ辻くんと知り合い、2010年頃から辻椀木地木工芸に木地制作をお願いしている。

以前から若い職人さんと仕事をしたいと思っていた。
それは自分が一生漆の仕事をするときに、一緒に仕事をする人が若い人だと共に成長していけるから。僕の場合、人として仕事以外にどれくらい付き合いをしているかどうかも重要かもしれない。辻くんとは付き合いが10年くらいになるが、もうある程度こちらの意図を分かってくれている。

普通だったら、職人さんに製図を渡してそれをそのまま削ってもらうと思ったのとちょっと違って出来上がってくることが多いから、職人さんにその「ちょっとの違い」を伝えるためにやりとりしないといけない。そのやりとりが何回で終わるかはとても大事になるが、辻くんはそこの部分を分かってくれる。「ここをもうちょい削ってほしい」とか言うとそれに対応してくれる。柔軟性が高いし必死さが違う。仕事のかかり方が違う。一生懸命やってくれる。

だから仕事を出す人間として辻椀木地木工芸は頼みやすい。

木地師として年数を重ねてきて、ますます全てを言わなくても形にしてくれるようになっているし、自分の好みを理解してくれる。仕事の回数を重ねていく度によりよくなってきている。
あと辻くんが椀木地の仕事が好きだということも仕事を頼む理由。

付き合いも深まっているし、その付き合いの中で僕と辻くんやったら「ここをもうちょっと削って」って言ったらその場ですぐに削ってくれるからそれで仕事が成立している。
でも、親しくなっても「なあなあ」にならない。「なあなあ」になったら終わりだから。 それがこう、自分の思った通りになっていくから仕事を頼んでいる。

「要するに、ここ!ここねん!」「このケツを1mmなら1mm削ってほしい」って言ったらそれをやってくれる。リピートする要因はそこ。
そんな話し合いができるから、ほかの木地屋とは違う。

僕から「こうしてほしい」ってのと、辻くんが「こうしたい」ってところの折り合いがついてるからできる。でもそれをなんとなく察して感覚でやってもらえる。

その感覚は辻くんが持っている感覚で、僕が言ったとこと合致していい仕事になっている。

辻椀木地木工芸へのメッセージ

いよいよ、年齢的にも技術的にも成熟し、どんどん良い仕事が出来るタイミングがきたので、どんどん制作に励んでいただきたい。

古込和孝さん

漆芸家
代表作品:組盃
木地製作:辻椀木地木工芸