こんにちは。木地師の辻正尭(つじまさたか)です。
僕は年間350日くらい毎日仕事で椀木地を挽いています。
今日は、木材の赤太と白太の違いと、椀木地にはどっちが適しているのかについてお話ししていきます。

赤太は「心材(しんざい)」、白太は「辺材(へんざい)」

丸太を輪切りにした時に芯に近い真ん中の赤っぽい部分が赤太(赤身)、その外側の白っぽい部分を白太といいます。

赤太は、木材の中心に近い部分で「芯材(しんざい)」とも言います。白太より色が濃く赤っぽい見た目をしています。
白太は、木材の樹皮に近い部分で「辺材(へんざい)」とも言い、芯材に比べて白っぽい色をしています。

この赤太、白太は木の成長過程で生まれます。
木は、芯より外側に年輪を重ねていくことで大きくなっていくため、外側にいくほど新しくて若い細胞になります。若い細胞は水分を通して柔らかく、水分や養分の伝達を行う役割をしています。

外側に新しい細胞が生まれていくと、芯に近い古い細胞はだんだん水を通さなくなり、細胞としての活動を終え死んでいきます。そして硬くなった細胞の中には樹脂成分がたまり、虫をつきにくくします。硬くなった細胞は樹体を支える役目となるのです。

赤太は木を守り支える役目の死んだ細胞。白太は若くて水分や養分を運ぶ役目の細胞なのです。

赤太と白太の特徴比較

前項を踏まえて赤太と白太の特徴を表にまとめました。

赤太の特徴 白太の特徴
赤みがかっている 色が白い、明るい
硬くて重い 柔らかい
変形しにくい 変形しやすい
水分が少ない 水分を多く含む・吸湿効果がある
防虫効果がある 虫がつきやすい
腐りにくい 腐りやすい
カビが生えにくい カビが生えやすい
節が多い 節が少ない

このように比べると、赤太と白太の特徴に大きな差があります。
次の項ではメリットとデメリットから見てみます。

赤太のメリットデメリット

赤太のメリット

  • 変形しにくい
  • 硬くて丈夫
  • 腐りにくい
  • カビにくい
  • 虫がつきにくい

赤太は白太に比べて耐朽性があります。腐りにくく、歪みが起こりにくいため、お椀などに加工しやすい木材です。水分量が少ないため、重量が重く硬い丈夫な木材になります。
また、白太から赤太に変わる成長過程で様々な樹脂成分が蓄えられます。その中には、虫に食べられにくくする防虫成分や、腐りにくくする防腐成分が豊富に含まれており、それらは虫やカビから守ってくれます。そのため赤太は白太よりも腐りにくいのです。木の種類によっては独特の香り成分が含まれていることもあります。
赤太は腐りにくいため、建築物などでは雨水の掛かる場所や水場に近い部分などに使われています。

赤太のデメリット

  • 節が比較的多い
  • 赤太材は手に入りにくい
  • 通常より手に入るまでの時間がかかる

赤太の見た目の特徴として、色が濃く、白太より節が多いことが挙げられます。
白い色を好む場合や、節が全くないものを欲しい場合はデメリットとなりますが、それらは「味」として好まれることも多く、メリットにもなります。
特に、塗り物に関しては漆を塗るため、色味がデメリットとなることは例外を除いてあまりありません。

赤太の最大のデメリットは、赤太のみの木材「赤太材」を手に入れることの難しさにあります。
木材の中で最も丈夫で動きにくい赤太材は、お椀の木地として理想的です。しかし実際は、赤太材はとても手に入りにくい木材です。

まず、大きい椀木地材料としてはほとんど取れず、最大でも「合鹿椀」程の大きさまでになります。

※合鹿椀についてはこちらの記事をご覧ください。

白太が混ざる材とは違い、1本の木から取れる量が決まっていて、とても高額になります。また、市場に出回ることも少なく、材料屋さんに注文しても手に入るまでに1年以上かかることもあります。
どうしても必要な場合は丸太で購入するという方法がありますが、欲しいときはかなり前から発注が必要で、一回の仕入れが高額になるため現実的ではありません。
どちらにしても時間がかかり、かなり高額になります。

赤太材は、貴重で高級材として扱われており、手に入れるのは非常に難しいのです。

白太のメリットデメリット

白太のメリット

  • 色が綺麗で好まれる
  • 赤太より節が少ない
  • 吸湿効果があるため、水分の調整が必要な部分に適している。

白太は節がほとんどないことと、色がきれいなため、建築木材として部分的に人気がある木材です。
吸湿効果があり、水分調整が必要な部位に昔から使われています。

白太のデメリット

  • 腐りやすい
  • 虫がつきやすい
  • カビが生えやすい
  • 柔らかいので変形しやすい

建築木材として一定の人気がある白太ですが、椀木地の材料としてはあまり好まれません。やわらかいので変形もしやすいため、白太部分単体で椀木地使用することはまずありません。

お椀は赤太、白太の両方が混ざっていていい

赤太と白太のメリットデメリットを見てわかるように、赤太材のみ、白太材のみで使用することは少なく、混ざっていることが多いです。
椀木地では、赤太と白太が混ざっている木材を丈夫にして使用しています。

辻椀木地木工芸の木材(荒型)は9割以上ケヤキ材を使用しています。ケヤキは元々硬い木で、加工しやすい木材だからです。
さらに赤太と白太が混ざっているものを使用しており、その中でも赤太部分が多く、白太が比較的少ない木材を使用しています。

例えばこちらのお椀ですが、

このように、赤太と白太が混ざった木材を使用しています。

メリット

  • たくさん取れる
  • 市場に常にある
  • 材料納品が早い

赤太と白太が混ざった木材は、市場に常に流通しており、手に入りやすいです。
その上で、辻椀木地木工芸は信頼を置いている材料屋さんから仕入れています。

デメリットと対策

デメリット:白太部分は動きやすい
対策:木材の乾燥をしっかりしている

辻椀木地木工芸では、椀木地の木材(荒型)に燻煙乾燥を行っています。乾燥がしっかりされているから動きにくい木材になります。

燻煙乾燥については以前にこちらの記事で説明しています

椀木地には燻煙乾燥が良い理由

また、取引させていただいている材料屋さんは、ある程度白太を避けて木取りしてくれていて、加工する側や、お椀の仕上りに配慮した木取りをしてくれています。
そのため、辻椀木地木工芸で使用している木材(荒型)は「動きにくい」のです。

このように、椀木地の木材の良し悪しは、「材料屋さんの腕」と「乾燥」が影響します。その二つで材料(木材)の質が決まるとも言えます。

白太が好まれる例外「栃(とち)」

例外として、白太が好まれるケースがあります。
「銘木」と呼ばれる、稀少な杢を持つ木材にトチがあります。トチは美しい杢と呼ばれる木目以外に、白肌が特徴の木材です。
塗加工をせずとも美しく、漆を塗ることでさらに杢が際立つこともあります。
そのため、椀木地としてもとても人気があります。

例えば、トチの木で椀木地(皿)を削るとこのような杢(木目)が現れます。
同じトチでも一つ一つ杢が違い、この杢と白い木肌が栃の価値でもあります。
※下の写真は木地を削っただけです。何も塗っていません。

さらに、トチに漆を塗ると下の写真のように木目をさらに浮き上がらせることもできます。

人気のトチですが、トチはケヤキなどの赤太、白太の特徴が当てはまらない木です。
まず、赤太と白太の区別(境目)がつきにくく、赤太でも腐りやすい一面があり、保存や加工に気配りが必要です。その上、取れる量が少ないために希少な木材として高額な取引がされています。

まとめ

今日は木材の赤太と白太の違いと、椀木地にはどちらが適しているかについてお話ししました。

結論:椀木地材の理想は、加工しやすく動きにくい赤太材だが、まず手に入らないので、赤太と白太が混ざった、しっかり乾燥させた木材(荒型)が最も適している。

以上です。今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。