こんにちは。木地師の辻正尭(つじまさたか)です。
僕は年間350日くらいほぼ毎日仕事で椀木地(お椀の木地)を挽いています。
その椀木地は「轆轤(ろくろ)」を使って全て手で挽いています。
今日は、オーダーメイドの椀木地をつくるのなら旋盤(せんばん)より轆轤(ろくろ)で作るほうが良い、その理由をお話ししていきます。

轆轤(ろくろ)と旋盤(せんばん)の違い

椀木地を作るために使う機械は大きく分けて以下の2種類があります。

・木工用の轆轤(ろくろ)
・木工用(または鉄鋼用)の旋盤(せんばん)

轆轤と旋盤の大まかな機械の作りは同じです。
しかし椀木地屋の中には、轆轤で全て手挽き制作する椀木地屋と、旋盤のみで制作する椀木地屋、轆轤と旋盤両方を使って制作する椀木地屋があります。

旋盤(せんばん)とは

まずは旋盤とはどんな機械なのかを解説します。

旋盤の機械の大きさは、一般的なテーブルに乗るようなとても小さいものから、広い工場に置くような大きなものまで、多種多様な大きさがありますが、基本的な構造は以下の図の様になっています。
旋盤の大きさで制作できるものの大きさが決まり、大きい旋盤ほど小さいものから大きいものまで幅広い物づくりができます

そして、旋盤の構造の元になっているのは轆轤で、構造だけ見ると旋盤と轆轤はほとんど同じと言って良いです。

旋盤で木材を削るときは、ヘッドストックのセンター部分に木材を固定して削ります。
「荒型(材料)を回転させて木材を削る」という機構は轆轤も旋盤も同じですが、轆轤は材料を1点のみに固定するのに対して、旋盤は軸を中心に2点で材料を固定できる違いがあります。
また、旋盤は材を固定する場合には金具を使用したり、チャックで固定します。

木工旋盤で制作されるものの代表例が「野球のバット」です。
縦長で円柱状の製品を作るのには欠かせない機械が旋盤です。
バットの場合は図の様に二点で固定し削ります。

椀木地を旋盤で挽く場合、図の様に1点で固定します。
この状態でお椀の材料(荒型)をヘッドストックに固定し、センターを中心に回転させ、刃物を図の方向にあて、削っていきます。

また、旋盤には木工用と鉄鋼用があり、椀木地屋で鉄鋼旋盤が使われることもあります。木工旋盤も鉄鋼旋盤も構造は全く同じですが、鉄鋼旋盤で椀木地を挽く場合はカンナで削るのではなく、木地専用に作られた刃物を型に沿わせながら自動で削っていく装置となり、削る動作を自動化できます

※機械の構造や、刃物の当て方は木工旋盤も鉄鋼旋盤も全く同じです。

轆轤(ろくろ)とは

轆轤とは円状の器(お椀)を削り出す機械のことで、お椀の材料の荒型を固定し、軸(心棒)を中心に回転させ、そこに棒状のカンナの刃先を当ててお椀の形を削り出します。
轆轤は荒型を1方向に固定します。
また、固定する際の接着部分の部品も木材で制作します。

轆轤は旋盤の元になった機械です。

写真は木工用の轆轤(ろくろ)で木地を挽く様子です。

木地を挽く時、轆轤を正面に見るとこのような構造になっています。

さらに、先ほどの轆轤を上から見るとこのような構造となっています。
右に材料の「荒型」を装着する部分があり、左の箱上になっている部分のフタを開けるとベルトがあります。
このベルトは、足元のペダルと連動しており、ペダルを踏むことでこのベルトを動かして、轆轤を回転させ、回転させた木材をカンナで削っていきます。

辻椀木地木工芸の椀木地は全て轆轤(ろくろ)で手挽き

辻椀木地木工芸は、轆轤で全て手挽き制作する椀木地屋です。轆轤を使用し椀木地を一つ一つ全て手挽きしています。木工旋盤は使っていません。
辻椀木地木工芸はオーダーメイドの椀木地を作るには轆轤で手挽きが最も良いと考えています。

轆轤で手挽きする椀木地は細かな要望に応えられる

辻椀木地木工芸が轆轤で全て手挽きする理由は、個人でオリジナルの作品を作っている作家さんの細かな要望に応えられるからです。
轆轤は旋盤に比べて、椀木地1個を作るのに時間がかかります。しかし、お椀を1個ずつ轆轤で手挽きする方法は、木地の製作途中で細かな微調整を可能にします。
作家さんの要望や、作家さんがこの後「どのように椀木地に漆を塗っていくのか」などを聞き取った上で、その作業工程を考慮した木地の薄さやmm単位の微調整ができます。
ほんの少し手を加えるだけで作品の仕上りに違いが出ることを、僕はこれまでの経験で学んで来ました。
そのため、辻椀木地木工芸では、椀木地を1個ずつ轆轤で手挽きしています。

旋盤を使うメリット

では、旋盤を使用する椀木地屋はなぜ旋盤を採用するのか?
それは旋盤ならではのメリットがあるからです。

旋盤は、大まかな構造は轆轤と同じです。轆轤より効率的に早く作業できる機械が旋盤です。まったく同じ形の木地を早くたくさん挽くのに適しています。
例えば、同じ形のお椀を100個注文があった場合に、轆轤よりも早く100個仕上げることが旋盤では可能です。

また、轆轤で挽くには難しいワイングラスの様な細長い形を挽く際、旋盤がより適しています。
※木工旋盤で作る代表的なものに野球のバットがあります。

旋盤のデメリット

ではなぜ、旋盤を使わず轆轤で木地を挽く木地屋がいるのかというと、旋盤は1個、2個と小さい数の注文を受けるのには向いていないからです。
旋盤を使用するには、機械を動かすための下準備や電気代等のコストがかかるため、一度にたくさんの木地を挽く必要があります。
同じ木地をたくさん挽くことで、機械を動かすコストが抑えられ木地1個の価格を下げられると考えられます。
そのため、旋盤は少量のオーダーメイド木地制作には向いていません。1個の椀木地を挽くのに旋盤を使うのはコストに見合わないからです。

※旋盤を採用している椀木地屋でも、全て旋盤で仕上げる木地屋と、部分的に旋盤と轆轤を使い分ける木地屋があります。
※品質に至っては、轆轤挽きが良くて旋盤が悪いなどということはありません。もちろんその逆もありません。品質の良し悪しは、職人さんの腕と木地の仕上げ方で決まるのは轆轤でも、旋盤でも同じです。

漆作家さんの作品こそ轆轤で手挽きしたいその理由

漆塗りの世界では、塗師屋といわれる漆器のプロデューサーさんが経営しているお店が多くあります。塗師屋からの木地注文にはお椀100個、200個という注文も珍しくありません。その場合は、辻椀木地木工芸の様に轆轤で手挽きするよりも、旋盤で早くたくさん木地を挽き納品する事が喜ばれることも多いです。
しかし辻椀木地木工芸は、漆芸作家さんやこれから作家さんを目指したいと考えている人に「その人が納得いく椀木地を届けたい」という思いから、一つ一つ轆轤で木地を手挽きしています。そのための技術を磨いていきたいと考えます。

まとめ

今回は、オーダーメイド椀木地をつくるなら旋盤よりも轆轤(ろくろ)が良い理由についてお答えしました。

結論:オーダーメイド椀木地に轆轤挽きが適しているのは、作家さんの細かな要望や微調整に応えられるから。

そのため、辻椀木地木工芸の椀木地は轆轤で一つ一つ手挽きしています。
是非、椀木地を注文する参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。