こんにちは。木地師の辻正尭(つじまさたか)です。
僕は年間350日くらい毎日仕事で椀木地を挽いています。
今日は「椀木地の材料を乾燥させる方法は燻煙乾燥(くんえんかんそう)が最も良い」理由についてお話ししていきます。

燻煙乾燥(くんえんかんそう)とは?

椀木地の材料の「荒型」が届いたら、まず一番最初にする工程が「乾燥」です。

木は元々たくさんの水分を含んでおり、水分を多く含んだ状態で木地挽きをしてしまうと、椀木地になったときに変形してしまったり、材料の荒型の時点で割れてしまうことがあります。
それらの変形や割れを防ぐために荒型の状態でまず乾燥させる必要があります。
その乾燥方法の一つが「燻煙乾燥(くんえんかんそう)」です。
「燻煙乾燥(くんえんかんそう)」とは、荒型を専用の部屋に入れ、おがくずを燃やして出た煙で「いぶす」ことによって木材を乾燥させる方法です。

辻椀木地木工芸は燻煙乾燥を採用

荒型を乾燥させる方法は「自然乾燥」「真空乾燥」「燻煙乾燥」といくつかありますが、辻椀木地木工芸は「燻煙乾燥(くんえんかんそう)」を採用しています。
荒型の割れや、椀木地になったあとの変形を防ぐために一番適している乾燥方法が「燻煙乾燥」だからです。

燻煙乾燥以外の乾燥方法とそれぞれのメリット

自然乾燥

最も時間がかかる乾燥方法です。半年~1年かけて屋内(又は屋外)の広く風通しの良い場所で行います。機械を使わないためコストがかかりません。自然にまかせた乾燥法です。木の持つ色ツヤが保持されるメリットがあります。

※荒型屋さんでは荒型の納品前にも行ってくれることがあります。

真空乾燥

最も乾燥時間が短い乾燥方法です。
木材を密閉し、真空ポンプで減圧排気する方法で、新しいやり方のため取り入れている木地屋はまだ少数です。
高温でしっかり乾燥させることができますが、木の持つ油分が飛んだり、木が変色するリスクが考えられます。しかし、技術の発達で今後改善されることも期待できます。

その他

温風乾燥機や除湿乾燥機を使用し2~3週間かけて人工乾燥を行っている椀木地屋もあります。
木材の乾燥方法が違っても、荒型の水分量を7%にするという目的はどの方法でも同じです。

燻煙乾燥は割れにくい木地を作る

燻煙乾燥のメリット

1.強度があり、狂いにくい木材(荒型)に仕上がります。

2.日本には古くから囲炉裏文化があるように、椀木地を制作する時に発生したおがくずを燃料に煙の力だけで乾燥させる燻煙乾燥は「防腐・防虫効果」が期待できます。

3.適度に樹液などの木が持つ油が木材内に留まるため、ツヤがあり、美しい色味を保ち、美しい木目の材ができあがります。

燻煙乾燥のデメリット

乾燥に1か月~1か月半かかるため、椀木地の納品にある程度の時間がかかります。
特殊な椀木地の場合は、荒型の仕入れにも時間がかかる場合があるため納品までに数か月かかることもあります。

※辻椀木地木工芸では、オーソドックスな椀木地の材料は燻煙乾燥をさせたものをストックとして持っているため、少ない個数の場合早く納品できる場合があります。

木の負担を最小限にする燻煙乾燥

燻煙乾燥は、木に負担をかけずくり乾燥させることで木材への急激な変化を最小限に抑え、荒型の割れを防ぐことができます。その結果、変形しにくい椀木地を作ることができます。

椀木地を作る上で一番のリスクは材料の荒型(あらかた)が割れることです。
例えば、材料屋さんから届いた後の管理次第で割れることがあります。
荒型が割れる理由には、木に含まれる「水分量」が関係していて、水分が多いと荒型に急激な乾燥が起こった場合に割れたり、椀木地になったとしても後で変形しやすくなります。
これらを防ぐためには、荒型を急激に温度変化させることなく適度な水分量になるまで乾燥させる必要があります。
燻煙乾燥は最も木に負担をかけず乾燥させることができます

乾燥室に荒型を並べた様子

おがくずに着火し、燻煙乾燥を始める様子

木地挽きできる荒型の水分量は7~9%

椀木地を挽くために荒型のちょうどいい水分量は7~9%と言われています。
ですが、荒型は材料屋さんで削り出した時点で約50%程度の水分を含んでいます。
そのため、注文した荒型は材料屋さんで自然乾燥してもらい、約20%以下の水分になったら辻椀木地木工芸へ納品されます。
辻椀木地木工芸に届いた荒型はすぐに乾燥室で燻煙乾燥させます。
(※約20%水分を含んだ荒型を外気や外の風に当てると急激に乾燥し割れるリスクがあるからです。)
燻煙乾燥室で約1か月~1か月半かけゆっくり水分を5%程にします。
その後、乾燥室から出して屋内の通気性が良い場所で約1週間保管すると水分が少し戻ります。
荒型の水分が7~9%程度になると乾燥の工程は終了し、木地を挽くことができます。

燻煙乾燥は急激に乾燥させることなく、ゆっくり水分量を7~9%程度まで下げることができます。
辻椀木地木工芸ではこの手順ですべての荒型を乾燥させています。

燻煙乾燥のコツ

燻煙乾燥を始めるときは、荒型に急激に温度変化を与えないように気を付けます。
最初に乾燥室に荒型を入れる時は室内の温度が一番低い場所に荒型を置き、徐々に乾燥させるようにします。
そして乾燥を始めて3週間程度経つ頃に温度が最も高い場所に移動させ、最後の1週間は火を強くし乾燥室の温度を上げカラッとしっかり乾燥させます。

これらの手順は、常に乾燥室の火の状態や温度に気を配りながらタイミングを見て行います。燻煙乾燥は一度火を入れると乾燥が終わるまで常に管理が必要です。また上手く乾燥させるためには経験も必要になってきます。

実際に水分量を測ってみた

実際に含水計を使って、燻煙乾燥後の荒型の水分量を測ってみました。
乾燥させた荒型は「含水量が7~9%の間」であればOKです。

こちらが荒型の水分量を計る含水計です。

荒型の水分を含水計で測定する様子です。

実際に測ってみると水分量は8.7%でした。
乾燥させた荒型は「含水量が7~9%の間である」ことが確認できました。

燻煙乾燥は変形しにくい椀木地を作る

木に負担をかけずゆっくり乾燥させる燻煙乾燥は、木材への急激な変化を最小限に抑え、荒型の割れを防ぐことができます。その結果、変形しにくい椀木地を作ることができます。
そのため辻椀木地木工芸では燻煙乾燥させた荒型で木地を挽いています。

まとめ

今回は椀木地の材料を乾燥させる方法は「燻煙乾燥」が最も良い理由についてお話しました。

その理由は、燻煙乾燥した荒型を使うと変形しにくい椀木地を作ることができるから。

木地屋を選ぶ時の参考にしてみてください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。