「オーダーメイド木地」の注文を受けたいと思うようになったきっかけは、若手の漆塗り職人の会でした。
会で一緒の作家さんから木地注文をもらったことがきっかけで、小ない個数でクオリティにこだわった木地注文を受けるようになりました。
実はそれ以前の仕事のやり方では、お客様とのコミュニケーションが足らず、納品した木地がお客様の思っていたものと違い返品になることがありました。
返品された木地を作り直すことで予定より納期が遅れたり、材料のロスが出ていました。
ここでもまた考えていました。
「自分の仕事のやり方の何がいけないのか?」
その答えは、作家さんの注文を受けるにあたって徐々に気付いていきました。
「これまではお客様が何を重要視しているかに気付けなかったし、そもそも気付こうとしていなかったのでは?」
「でも、これからはそんなことでは通用していかない。今のままでは本当にいいものは作れないし、求められているクオリティには応えられない。もっとお客様が何を求めているのか興味を持って聞いていこう。」
という気持ちに変わっていきました。
それからは、お客様が何を求めているかよく聞くようにし、コミュニケーションを増やすようにしました。そうすることで、「お客様が何を求めているか」以前より聞き出せるようになりました。
最近では、お得意様が何を求めているかがすぐにわかるようになってきました。それでも、聞き取りと確認を徹底して仕事を進めていくことで、お客様に納得していただける木地を納品できるまでになりました。
お客様である作家さんの要望に応えるられるようになるにつれ、作家さんと一緒に作品を作り上げることが喜びとなりました。
大量生産・大量消費の物づくりではなく、漆器本来の良質な一点物を作るものづくりに携わりたいという思いも湧いてきました。
そこで、もっとたくさんの漆塗り作家さんの作品作りの役に立ちたいと思い、「オーダーメイド木地」の注文に特化した椀木地作りを始めることにしました。